身ごもり政略結婚

雅楽と太鼓の音が神社の境内に響き渡り、いよいよ参進の儀。神職や巫女に続いて神殿まで進む最初の儀式だ。


「結衣、緊張してる?」
「大丈夫です」


気遣いの言葉をかけてくれた大雅さんは、二十六歳の私より六つ年上の三十二歳。

身長は百八十五センチもあり、すらっと足が長い。

二重のくっきりした目は黒目がちで鼻筋も通っている。眉目秀麗という言葉はこの人のためにあるのかもしれないと思うほど。

彼が身に着けている紋付き袴も同じく峰岸織物のもので、今日だけのために新調された。


朱色の大きな唐傘をかざされて神職と巫女のあとを歩き始めると、参拝客が足を止めて見学している。

慣れない着物姿で緊張しながらではあったが、大雅さんの隣を一歩一歩進んだ。


やがて神殿に到着し、斎主が祝詞を読み上げる祝詞奏上や三献の儀――いわゆる三三九度などが張り詰めた緊張の中厳かに進む。


まさか彼とこうして結婚ということになるなんて、考えたことがなかった。

あの日、までは――。
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