身ごもり政略結婚
「決まったよ。アルカンシエル、千歳を採用してくれるって!」
「本当か?」
「うん。さっき大雅さんから連絡が入ったの。間違いない」
大雅さんが麻井さんに千歳に連絡を入れさせると言っていたのを断って、私が来たのだ。
直接伝えたかったから。
「あぁっ、そうか。うちが……」
父が感極まった様子で目頭を押さえるので、私の胸もいっぱいになる。
「千歳はこれからもっと発展していくんだよ。春川さん、父をお願いします」
「こちらこそ」
春川さんも声が震えている。
父を信じてついてきてくれた彼には感謝しかない。
「もー、泣いてる暇なんてないんだから。新作、考えたの。クリスマスに向けた新しい和菓子」
私はスケッチブックを差し出した。
「なんだこれは……」
大雑把に涙を拭った父は、私のイラストに難癖をつける。
でもいつものことだからなんてことはない。