身ごもり政略結婚
「もちろん。好きなものもってけ。それと、お礼を言っておいてくれ。須藤くんは千歳の恩人だ」
父がしみじみと言うので、私は笑顔を作ってうなずいた。
大雅さんに会えてよかった。
私やこの子だけでなく、店まで守ってもらえた。
「わかった。秋色もらってく。大雅さん、これ大好きなんだって」
あれからもう一年か……。
まさか赤ちゃんができているなんて想像もつかなかったな。
私はそんなことを考えながら、店をあとにした。
私に食欲が戻ってくると、大雅さんが時々エール・ダンジュのケーキをお土産に持って帰ってきてくれるようになった。
「これ、すっごくおいしい。あっさりしてていくつでも食べられそう」
ソファに並んで座り私がひと口食べたのは、マロンケーキ。
生地に小豆が練り込まれていて、栗の甘露煮との相性が抜群。
クリームがさっぱりしてる?と思ったら豆乳ベースなのだとか。