身ごもり政略結婚
「今年の新作だよ。チーフパティシエが千歳に影響を受けて作ったんだ」
「うちの影響?」
まさか、あれほどの有名店が千歳に影響を受けるなんて。なにがあるかわからない。
「そうだぞ。千歳の和菓子はアルカンシエルの客室のお茶うけとしての採用だったけど、実はラウンジのエール・ダンジュの隣に抹茶が味わえる店を展開して、そこでも出そうかって話まで発展してる」
「え!」
それはすごい。
「アルカンシエルは、海外のお客さまに日本のよき伝統を知ってもらってお帰りいただきたいという気持ちが大きいんだ。スイートで着物を貸し出すのも、茶室を作ったのも全部そのため。次は千歳の和菓子がその一端を担うんだよ」
「ありがたいお話です」
荷が重い気もするけれど……そうなれたら素敵。
「うん。今回の件で、社長は完全にエール・ダンジュ派になってくれて、その店も全面的に任せてもらえそうだ。そういえば、イベントごとにはさみ菊のような観賞用の和菓子もあったらいいなと言ってた」