身ごもり政略結婚

「それはもちろん。錦玉羹(きんぎょくかん)なんていいですよね。父、得意ですよ」

「おぉ、それいいかも」


さすがは和菓子通。
錦玉羹だけでわかった。

錦玉羹というのは、夏の風物詩。

寒天の中に、練り切りで作った金魚や水草など、夏の風物詩を閉じ込めた涼しげな和菓子だが、中に置く練り切りは変更できる。

現代風にアレンジを考えると……夏以外でも使える。


「この前、父に練り切りでクリスマスツリーやサンタを作ってほしいとお願いしたんです。錦玉羹の下の部分を、メレンゲで作った淡雪羹(あわゆきかん)にして雪を表現し、その上にそういう練り切りを置いたら、クリスマスにぴったりかも」

「お父さん、作ってくれるかな……」


彼は難しい顔をしているけれど、私はうなずいた。


「大丈夫です。私がお願いします」


絶対に文句を言いながら作ってくれる。


「それは頼もしい。お願いな」


大雅さんは私の肩を抱いたかと思うと、額にキスを落とす。
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