身ごもり政略結婚
「あ……」
「あのさぁ。いつになったら慣れるんだ? 耳、真っ赤だぞ」
私の耳朶をつかんでケラケラ笑う彼は、打ち解けてからとても明るい。
「赤くないです!」
「それじゃあ、赤くしないと」
「えっ……」
耳を押さえて反論したのに、あっという間にその努力も無駄になる。
今度は額ではなく、唇にキスが降ってきた。
ケーキの糖度との相乗効果なのか、クラクラするほどの甘いキスは、私をたちまち幸せに導く。
「ほら。やっぱり真っ赤」
彼はそう言いながら耳朶を甘噛みした。
スキンシップが増えたのはうれしいけれど、毎日暴れ回る心臓が口から飛び出してこないか心配しなければならなくなっている。
「もう……」
不貞腐れたふりをすると、ギュッと抱きしめてくれた。
「結衣。それともうひとつ報告」
「報告って?」