身ごもり政略結婚
過去にヘッドハンティングまでされた赤池さんにはかなり厳しい通達だが、それだけのことをしたということだ。
「彼女はハウスキーパーの職を受け入れるか、アルカンシエルを去るかどちらかしか選択肢はない」
大雅さんの目がキョロッと動いた。
きっと……後者を選ぶことがわかっていての通達なのだろう。
プライドが高そうな彼女が転勤を受け入れるとは思えない。
「今後、同じようなことがあっては困る。八坂社長は上の地位に立つ者の発言の大きさをよく心得ていて、上から下す判断は誠実でなければならないという信念がある。権力を振りかざして言うことをきかせるなんてもってのほか。それは俺も同じ気持ちだ」
八坂社長も大雅さんも、自分たちのひと言が会社にどれだけ影響を与えるかよくわかっている。
だからこそ、採用権をちらつかせて大雅さんに迫った彼女を許すわけにはいかないのだろう。