身ごもり政略結婚
赤ちゃんにだけでなく、私にも過保護だ。
彼がベッドルームに着替えに向かうので、私はキッチンに行こうとすると、腕を引いて止められたので首を傾げる。
「肝心なことを忘れてた。結衣が元気なら、明日デートしようか」
「デート?」
「うん。行きたいところがあればと思って。でも、無理は禁物だけど」
ホントに?
私たちは婚前もまともなデートはしていない。
妊娠してからはつわりのせいで出かけられず、治まってきてからも近所に出かけるくらいだった。
だから、すごくうれしい。
「わー、どこにしよう。どうしよう!」
浮足立つ私を見てクスッと笑う彼は、頭をポンと叩く。
「そんなに興奮すると、赤ちゃんびっくりするぞ」
「あ、ごめんね」
慌ててお腹に手を置くと、また胎動を感じた。
まるで私たちの会話を理解しているみたい。
「ゆっくり考えて。着替えてくる」
「はい!」
大雅さんとのお出かけがこんなに楽しみだなんて。
結婚前に経験できなかった、恋の始まりの頃のようなワクワク感が私を取り囲んでいた。