身ごもり政略結婚

思わず本音がこぼれると、彼は口をとがらせている。


「似合うも似合わないも、俺は絶対に抱っこして散歩するんだ」


出産後の赤ちゃんとの生活を頭の中で思い描いている私と同じか。

ほのぼのとした光景が頭に浮かんで、自然と頬が緩む。


楽しみだな。早く産まれておいで。


男の子をと強く希望していたお義母さまも、お義父さまが説得してくれたのか、最近はなにも言わない。

私の体調が上向いてきてからは、互いの実家に何度か顔を出しているけれど、性別の話には一度もならなくて助かっている。


やはり、どちらでもかわいい我が子には変わらない。
皆に望まれてこの世に誕生してほしい。

私はお腹をさすりながらそう願った。


そのあとは、私のマタニティウエアに加え、産後に着られる服まで買い込んだ。

これほど大量の買い物をしたことがなくて腰が引けてしまい断っても、彼は「今まで買ってやれなかったから」と譲らない。
< 260 / 322 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop