身ごもり政略結婚

「でも……」
「遠慮はいらない。俺も楽しいし」
「楽しい?」


彼のものは買ってないのに?


「うん。結衣の笑顔を見ているだけで幸せだ」


私、そんなに笑顔全開だった?

たしかに久しぶりに自分の洋服を選んだので、テンションが上がっていたのは否定しないけど。


ただ、選んだことが無駄になるほど、彼は次から次へと私に洋服を当ててみては追加していったので、私は目を白黒させるばかりだった。


そのあとは少し休憩しようということで、再び車に乗り込み、白金台のエール・ダンジュ本店に向かった。

私が新作を食べたいとおねだりしたからだ。


「うわー、混んでる」


店の駐車場についたはいいが、もう日が暮れかけているというのに店外に行列ができていた。


「休日だからな」


さすが全国からお客さまが集まる人気店だ。
十二月の寒空の中、長時間並ぶのはさすがに堪える。
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