身ごもり政略結婚

「席を空けさせてくるよ」

「ダメですよ。お客さま第一です。今日はあきらめます。でも今度、お土産がほしいなぁ」


きっと大雅さんは妊婦の私を気遣ったんだろうけど止めた。


「おぉ、いくつでも。結衣、そうやっておねだりするとかわいいな」
「えっ……」


彼はニヤリと笑ったと思ったら、運転席から身を乗り出してきてあっという間に唇を重ねる。


「ちょっ、見られてますって!」
「誰も見てないよ」


大雅さんはおかしそうにクスクス笑っているけれど、私は慌てて辺りを見回した。

最近は愛情表現がすごすぎて、うれしいけど時々困る。
いや、うれしいのほうがかなり勝ってはいるけれど。


「それじゃ、どこに行こうかな……。結衣、体は大丈夫?」
「はい。元気いっぱいです」


お腹が張ったような感じもないし、赤ちゃんも元気よく胎動を繰り返している。


「じゃあ少し早めの夕飯食べて、もう一カ所寄って帰ろう」
「もう一カ所って?」
「秘密」
< 262 / 322 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop