身ごもり政略結婚
「席を空けさせてくるよ」
「ダメですよ。お客さま第一です。今日はあきらめます。でも今度、お土産がほしいなぁ」
きっと大雅さんは妊婦の私を気遣ったんだろうけど止めた。
「おぉ、いくつでも。結衣、そうやっておねだりするとかわいいな」
「えっ……」
彼はニヤリと笑ったと思ったら、運転席から身を乗り出してきてあっという間に唇を重ねる。
「ちょっ、見られてますって!」
「誰も見てないよ」
大雅さんはおかしそうにクスクス笑っているけれど、私は慌てて辺りを見回した。
最近は愛情表現がすごすぎて、うれしいけど時々困る。
いや、うれしいのほうがかなり勝ってはいるけれど。
「それじゃ、どこに行こうかな……。結衣、体は大丈夫?」
「はい。元気いっぱいです」
お腹が張ったような感じもないし、赤ちゃんも元気よく胎動を繰り返している。
「じゃあ少し早めの夕飯食べて、もう一カ所寄って帰ろう」
「もう一カ所って?」
「秘密」