身ごもり政略結婚

「家から電話で指示を出すことはありそうで申し訳ないけど、出産から十日は完全に休みにしてもらうつもり」

「無理しなくても……」


専務として、いや社長のお父さまより主となって現場を動かすという役割を背負っている彼がそんなに長く抜けたら、大混乱じゃない?


「俺が休みたいんだ。出産後は結衣には体を休めてもらいたいし、子供に好かれるための努力は最大限しないと。嫌われるのだけは勘弁」

「あはは」


好かれるための努力って、そんな小さな頃の記憶は残らないでしょ?

でも……愛されているという感覚は必要なのかも。
初めての世界で愛情に包まれて育つって、大切なことのような気がする。

きっと赤ちゃんだって戸惑いばかりのはずだ。


「八坂社長も盛んに勧めるんだよ。父親になった実感がじわじわ湧いてくるから、絶対に一緒にいたほうがいい。あとで後悔してもこの時間は戻ってこないぞって脅すんだ。仕事は巻き返せばいいってね」
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