身ごもり政略結婚

「八坂社長もお休みされたんですか?」


八坂社長の奥さまは無事に切迫流産を乗り越えて、少し前に男の子が誕生している。


「うん。俺たちが率先して育休をとらないと部下も取りにくいと言われてその通りだと思ったし、結衣と一緒に幸せを噛みしめたい」


大雅さんがとても優しい目をしているので、心が温かくなる。


「うれしいです。よろしくお願いします」
「な、おむつ替えの練習しておかなくてもいいの?」
「そんなに難しくないですよ」


前のめりになって聞いてくる彼がおかしい。

彼は絶対にいいパパになる。
そして私たちは、世界で一番幸せな家族になる。


食事を堪能したあとどこに行くのかと思いきや、彼は車を走らせて郊外の小高い丘の上の公園に向かった。


「うわー、きれい」
「ここなら車から降りなくても夜景が見えるから」


私たちの眼下には、宝石が散らばっているかのようなキラキラとした素晴らしい光景が広がっている。
< 266 / 322 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop