身ごもり政略結婚
「人ごみ、疲れただろ?」
気づいていたんだ。
久しぶりだったので、本当はちょっと疲れている。
でも楽しかったので内緒にしておいたのに。
「……はい」
「結衣の『大丈夫』は強がりのことが多いから」
そういえばつわりで倒れたときも『お前の大丈夫は信じない』と言われたな。
その頃はまだ彼と距離を感じていたけれど、私のことはよく気にかけてくれていたのだ。
「ママの感情は、そのまま赤ちゃんに伝わっているんだってさ。だから結衣が楽しいとかうれしいとか感じると、赤ちゃんも喜んでいるはず」
だから、こんなきれいな景色を見に連れてきてくれたのか。
「それに、結衣はいつも赤ちゃんに話しかけたり絵本を読んであげたりしてるだろ? それもとても大切で、産まれたあと同じ声を聞くと安心するって。すごいよな、まだ産まれてもいないのに」
彼は私のお腹に優しく触れて目を細める。
「きっと大雅さんの声も大好きですよ。それに、たくさん幸せを感じているんじゃないかな?」
「えっ?」