身ごもり政略結婚
「だって私……大雅さんとこうして一緒にいられて、すごく幸せなんです。大雅さんとこの子と一緒に生きていけるのが、本当に――」
彼の愛をあきらめていた時期もあるので、こんな穏やかな時間が持てていることに胸がいっぱいになって続かない。
「俺もだよ。俺の勝手で振り回したから、ずっと結衣に対して罪悪感があった。でも、必ず幸せにするし、俺も幸せになる。それだけは嘘じゃない」
私の手を強く握って真摯な眼差しを注ぐ彼は、私がうなずくとホッとしたような笑みを浮かべる。
「全力でサポートするから」
「お願いします」
きっと彼は、出産が近づくにつれナーバスになっている私に気づいている。
初めての経験なのだから、陣痛がどれくらい痛いのかまったくわからない。
個人差も大きいというし。
でも、この子のためならきっと踏ん張れる。
「結衣に出会えてよかった」
切なげな声でそう囁いた大雅さんは、私にそっと唇を落とした。
それから幸せの余韻に浸りながら、手をつなぎあったまま夜景を眺めていた。