身ごもり政略結婚
「男の子と女の子とひとつずつ決めておこうと思って」
「そう、ですね」
お腹が大きくなってきて出産を強く意識し始めてはいるけれど、名前は考えていなかった。
「結衣はどんなのがいい?」
「うーん。簡単には決められないですよね」
「そうだな」
一生使うんだもの。
皆に親しみを込めて呼んでもらいやすくて、あまり奇抜でないものがいい。
「〝大雅〟という名前にはどんな想いがこもっているんでしょう」
「子供の頃に聞いたことがあるけど、大きな心を持った気品ある子に育つようにつけたんだってさ。そのときは、ふーんと思っただけだったけど、ちょっと期待しすぎだろ?」
彼がおどけた様子で言うので、クスッと笑ってしまった。
「そんなことないですよ。その通りに育ってます」
「あれ、そんなに褒めて。欲しいものでもあるの?」
「お世辞じゃないですよ!」
彼は広い心で不安定な私を支え続けてくれた。
しかもエール・ダンジュの跡取りにふさわしい品格も持ち合わせている。
あのプレゼンのときのオーラはすごかった。