身ごもり政略結婚

「おぉ、いいかも。須藤煌大って、響きもいい」


気に入ってくれてよかった。


「大雅さんは?」

「俺は女の子を考えてたんだ。それで〝愛結(あゆ)〟という名前が浮かんだ。愛するの愛と、結衣の結。この子は俺たちの愛を結んでくれたし、愛でいろんな人の縁を結べるような優しい子に育ってほしい。そんな意味を込めて」


それも素敵。


「愛結ちゃんか……。どっちかなー」


男の子でも女の子でも、愛に満ちあふれた、器の大きな子に育ってほしい。

大雅さんは婚約者に裏切られて心を閉ざしていた時期があったが、本当は私を丸ごと包み込むような優しさと、それでいて迷ったときはグイッと引っ張り正しい道を教えてくれるような頼もしさを兼ね備えている。

彼みたいに、強くて慈悲深い人に育ってほしいな。


「やっぱりどっちか聞かないでおいてよかったな。こんなにワクワクできる」


もしかしたらその発言は、私を気遣ってのことかもしれない。

お義母さまはもう納得しているかもしれないが、落胆させたのは間違いないので、性別を聞かなかったことが気になってはいるからだ。
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