身ごもり政略結婚

どうだろう。
自社の会議ならまだしも、取引先との商談や大切な面会だったらすぐに抜けられないかもしれない。


他に父や須藤のお義母さんには連絡はしていない。

初産は長くかかることが多いと聞いているので、そんなときに駆けつけてもらってもかえって気を使ってしまうからだ。

大雅さんが、出産が近づいたら連絡を入れる手はずになっている。



それから二時間。
私は病室の天井を眺めてひたすらじっとしていた。

なんとなく鈍い痛みが来ているような気もするけれど、陣痛だとしてもまだまだ初期だ。

お腹にモニターが付いていて、ナースステーションでチェックしてくれているので多分心配いらない。


――コンコンコン。

緊張の中ドアがノックされたので、喜びが広がる。


「大雅さん?」
「すみません、麻井です」


大雅さんが来てくれたと思ったのに、違った。


「どうぞ」


促すと麻井さんが入ってきて、申し訳なさそうにしている。
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