身ごもり政略結婚
「趣味は?」
「趣味……。和菓子の新作のデザインを考えることでしょうか」
他に思いつかずそう答えると、彼はクスッと笑いを漏らす。
変だった?
「真面目なんだね。でも、大切なもののことをつい考えてしまうのは、俺と同じ」
「大切なものって?」
「エール・ダンジュ。これ以上大切なものなんてない」
彼のことも知りたくて聞き返すと、迷うことなくそう返ってきた。
私も千歳が大切。
だから気持ちはわかる。
けれど、私はエール・ダンジュ以上の存在にはなれないと言われた気がして、うつむいた。
彼は会社の未来のために私と結婚するのだから当然だろう。
結婚を決めたとはいえ、虚しさは拭えなかった。