身ごもり政略結婚

それから私たちの結婚の話はとんとん拍子に進んだ。

数回ふたりで会ったものの、挙式に関する打ち合わせの時間がほとんどを占め、仲を深めるというほどには至っていない。

不安がないと言えば嘘になるが、政略結婚なのだからこういうものだと自分を納得させている。


春の足音が聞こえる晴天の日に、いよいよ挙式を迎えた。

結婚式は、『女性は楽しみにするものだろ?』とすべて希望通りにしてもらえたので神前式も叶ったが、披露宴はエール・ダンジュの関係者へのお披露目のために催されたもの。

須藤のご両親も披露宴を行ったという格式高いホテルの一番大きな宴会場を借り、招待客はエール・ダンジュの仕事関係者も含め総勢百五十名にも及んだ。

中には一部上場企業の重役の顔もある。


一方平岡家の招待客は私の友人も含めて二十人にも満たない。
改めて須藤家に嫁ぐということの重責を感じていた。
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