身ごもり政略結婚

披露宴用に根岸織物の白無垢を扱っている、『ブランピュール』という高級ブランドで豪華なドレスをオーダーしてもらったというのに、終始挨拶をしていたことしか覚えていない。

けれども高校時代からの友人、真紀に久しぶりに会えたのはうれしかった。

彼女は三谷(みつたに)商事という大手商社で、バリバリのキャリアウーマンをしている。


無事に披露宴が終わりゲストのお見送りに立つと、彼女もやってきた。


「まさか結衣がこんな素敵な旦那さまをゲットしちゃうなんて」


ショートカットの似合う彼女は、ハキハキと話す活発な女の子だ。


「ありがとう」
「今日は来てくださってありがとうござまいす。今後とも結衣と仲良くしてやってください」


黒のタキシードを難なく着こなす須藤さんは、すっかり夫の顔で真紀に挨拶をしている。


「もちろんです。今度、お店にお邪魔します」
「お待ちしております。結衣に連絡くだされば、お席を用意させます」
「うわっ、うれしい」


真紀は私たちが政略結婚だとは知らないので大はしゃぎで帰っていった。
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