身ごもり政略結婚

すべてのお客さまを送り出したあと、須藤さんは父の前に私を連れていき頭を下げる。

父は神社での挙式のときから泣きっぱなしで、披露宴では春川さんに心配ばかりされていた。


「結衣さんのことは私が守ります。どうかご安心を」


彼は約束通り、これが店の存続をかけての結婚だとは口にしなかった。
それについては感謝している。


「須藤くんになら結衣をお任せできます。よろしくお願いします」


顔をくしゃくしゃにして泣く父を見ていると、たとえ政略結婚であっても幸せにならなければと強く感じた。


そのあとは、須藤の両親の前に立った。


「不束者ですが、これからどうぞよろしくお願いします」


もうすでに数回顔を合わせてはいるが、改めて頭を下げる。


「こちらこそ。早く孫の顔が見たいわ。ねぇ、あなた」


お義母さまは大手食品メーカーの社長令嬢だったとか。
そのせいか、立ち居振る舞いが上品で圧倒される。
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