身ごもり政略結婚
足を十分に伸ばせる大きな浴槽で彼に続いて体を温めたあと、すっぴんにパジャマ姿で緊張しながらベッドルームに向かう。
「失礼、します」
「もう結衣の家なんだから、そんな遠慮はいらないよ」
ベッドに入り本を読んでいた彼は、それを閉じたあと入口に立ち尽くす私のところまでやってきて腕の中に誘う。
「震えてる」
そんなつもりはなかったけれど、極度の緊張で体が言うことを聞かない。
「ご、ごめんなさい」
「謝る必要はないよ」
私を抱きしめて耳元で囁く彼は、しばらくそのままでいてくれた。
私、これからこの人に抱かれるんだ。
式を挙げたとはいえ、夫婦になった実感なんてまったくない。
大雅さんのことをほとんど知らないのに、妻になってしまった。
そして期待されている子をもうけなければならない。
しばらくして少し落ち着いてくると、大雅さんは背中に回した手を緩めて、私の額に唇を押し付けてくる。