身ごもり政略結婚

「つらかったら遠慮なく言えばいい」
「……はい」


小さな声で返事をすると、彼は私を不意に抱き上げて、キングサイズの大きなベッドに下ろした。

そして視線を絡ませて私の頬に優しく触れたあと、その手を首筋に滑らせる。


「結衣」


私の名を呼ぶ優しい声色に、なぜか涙がこぼれそうになる。

愛してもらえたらどんなにいいか。
でも、それは贅沢なんだろうな。


千歳を残し、父も春川さんを今まで通り働けるようにしてくれた。
それで十分。

私はそう自分に言い聞かせて、ゆっくり目を閉じた。


すると彼の唇が私のそれと重なる。


「ん……」


恥ずかしいのに甘いため息が漏れる。

大雅さんは指を絡めて手を握り、何度も何度もキスを繰り返す。

私の唇をこじ開けて入ってきた舌が、私のそれと絡まりあい卑猥な音を立てる。

そうかと思うと下唇を優しく食まれ、そのあとはついばむようなキス。

唇を重ねただけで全身が火照り、私の中の女のスイッチが入っていく。
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