身ごもり政略結婚

おまけに土日は私が千歳の手伝いに出てしまうので、すれ違っている。

父が盛んに『店はなんとかするから休め』と言うものの、これでいい気がしている。

そもそも、私たちは冷めた関係なのだから。


それが寂しくないと言ったら嘘になる。
けれど、政略結婚ってそういうことなのだろう。

でも、雰囲気を悪くしたくなくて、できるだけ笑顔でいることを心がけている。

そのうちもしかしたら、心が解けあう瞬間が来るかもしれないと信じて。


「今日は接待があるから帰りが遅くなる。夕飯はいらない」
「わかりました」
「結衣は今日も店に行くのか?」
「はい。今、七月の新作を考えているんです」


約束通り、千歳は存続させてもらえた。

今まで通り仕入れもできて、父も春川さんも以前にもまして奮闘している。


新作を作るときは何枚もイラストを描き、父と相談を重ねてそのうちのいくつかが商品となる。

今は、大雅さんの意見も参考にしている。
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