身ごもり政略結婚
「七月は……麩まんじゅうがうまい」
珍しく会話が広がったので心が弾む。
そういえば去年はたくさん買ってくれたような。
「麩まんじゅうは私も大好きです。あののど越しがたまらないですよね。そろそろ店に並べるので、今度持ち帰りますね」
「うん」
彼が千歳の和菓子好きというのには間違いなく、毎月定番のものと新作とを必ず食べてくれる。
こうして会話できるのは、かなりうれしい。
今日はいい日になりそうだ。
大雅さんはあまりペラペラ話すタイプの人ではなく、積極的に話題を振ってくることもない。
だからなかなか彼の人となりをつかむまでには至らない。
彼が朝食を半分くらい食べ進んだところで、テーブルの上のスマホが鳴り出した。
「もう来たか」
麻井さんだ。
彼は大雅さんと同じ歳で、学生時代からの友人らしい。
気の置けない仲間で、秘書をしてほしいと大雅さんが頼み込んで今に至るとか。