身ごもり政略結婚

彼が早めに訪れるのは、大雅さんが朝弱いことを知っているから。

万が一、まだ寝ていた場合に対応できるように、こうしたお迎えの時間も早めに設定してあると聞いた。


「あぁ、すぐ行く」


彼は電話に出て少し不機嫌に言うと、食事を半分くらい残して立ち上がった。


「行ってくる」
「はい。無理をされないでくださいね。行ってらっしゃいませ」


玄関までついていき彼に頭を下げて見送った。

本当は……もっといろんな会話がしたい。

朝が苦手なことと和食好きなことくらいしか、まだ彼のことを知らない。

でも、なにをどう切り出したらいいのかもよくわからず、積極的に話しかけられない。


それに……。『愛だの恋だのまったく興味がない』と最初に釘をさされているので、簡単に彼の心に近づくことができなかった。
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