身ごもり政略結婚
「須藤くんに連絡しようか」
顔を出した父がそう言い出すので、慌てて首を横に振る。
今日は大切な商談をしているはず。邪魔できない。
「得意先にいるはずだから、今はダメ。あとで連絡するから」
「でも……」
「お願い、放っておいて」
いろいろ説明するのが億劫で、反抗期の高校生のような言い方をしてしまった。
すると父は目を大きくして驚いている。
「ごめん。平気だから。着替えるね」
私がそう言うと、父は渋々顔をひっこめた。
とりあえず帯に押さえられた胃がムカムカするので洋服に着替えて横になっていると、少し収まってきた。
「やっぱりそうなのかな……」
いつ妊娠してもおかしくはないけれど、結婚も突然だったし気持ちがついていかない。
赤ちゃんを授かったかもしれないという喜びと同時に、自分が母親になれるのかという不安にも襲われた。