身ごもり政略結婚
アルコールは得意ではないが飲めるし、千歳の餡を炊く香りは大好きだったのに。
大雅さんはTシャツとスエットに着替えてすぐに戻ってきた。
「うがいもしてきたけど……すまない。まだ匂うよな」
「大丈夫……」
と言いつつ、微かに漂ってくる匂いに顔をしかめる。
「少しだけ我慢してくれ」
彼は私を抱きあげてベッドに向かった。
「なあ。匂いがダメって、もしかして……」
「はい。多分、赤ちゃんが。さっき検査薬を試したら陽性に」
「本当か?」
口をあんぐり開けて信じられないという様子の彼だったが、すぐさま表情に喜びが広がったのがわかり、なんだかとてもホッとする。
もちろん跡取りを望んでの結婚だったので喜ぶに決まっているのに、跡取りが欲しいのは両親で、彼自身はいらないのではないかとネガティブなことを考えていたからだ。
ずっと結婚を拒んでいたようだし。