身ごもり政略結婚
「……はい。今日、餡の香りで気分が悪くなって、それからはずっと調子が悪くて」
もしかしたら精神的なものもあるかもしれない。
つわりが始まったかもと強く意識してから、余計にひどくなっている気がするからだ。
「そうだったのか。病院は?」
「はい。明日行こうかと思ってます」
「あぁ、そうだな。そうしよう」
いつもはもっとどっしり構えている感じの大雅さんが、妙にソワソワしているのが意外だった。
「すぐに連絡してくればよかったのに」
「今日は接待があると聞いていましたし」
「いや。これからは連絡しろ。俺につながらなければ、麻井の電話番号とアドレスは教えたよな」
私はうなずいた。
麻井さんは彼より連絡がつきやすいと聞いている。
専務である大雅さんは重要な話をしているときに抜けられないからだ。
「明日、俺も時間を作る。一緒に病院に行こう」
「えっ、ひとりで行けます」