身ごもり政略結婚
麻井さんから彼のスケジュールは分刻みだと聞いている。
そして私生活より仕事を優先する人だとも。
それなのに……。
「大切なことだ。仕事はなんとでもする。麻井に連絡してくるけど、苦しくなったらすぐに呼べ」
「はい」
まさかこんなに優しくしてもらえるとは思ってもいなかった。
いや、彼が優しいのは私が念願の跡取りを妊娠したからなのかな。
私にじゃなくて、この子に優しいのかも。
大雅さんが部屋を出ていったあと、そっとお腹に触れてそんなことを考えていた。
その晩は、大雅さんがそばにいてくれるという安心感からか吐き気も収まり、ぐっすり眠ることができた。
翌朝は気分もよく目覚めた。
隣にいたはずの大雅さんがいないので物音がする書斎に向かうと、書類を広げて仕事をしている。
やはり忙しいのだ。
「大雅さん」
「あぁ、気がつかなかった。体調は?」
立ち上がった彼は私のところまで歩み寄り、顔をのぞきこんでくる。