身ごもり政略結婚
「大丈夫です」
「よかった」
小さく何度もうなずく彼は、「ふーっ」と吐息をついた。
「お忙しいですよね。結果はすぐに報告しますから、私ひとりで――」
「もう半休はとった」
大雅さんは私の発言を遮り、有無を言わさぬような強い口調で言う。
「はい」
迷惑をかけてはいけないと思ったけれど、彼も立ち会いたいのかもしれない。
自分の血を分けた子がおそらくここにいるのだから。
「麻井にいい病院も聞いておいた」
「それは助かります」
産婦人科を受診したことがないので、実はどこに行けばいいのかさっぱりわからなかった。
「でも、麻井さんがそんなことをご存じで?」
男性なのに?
それにたしか独身のはずだから、奥さんが出産したわけでもないはずだ。
「アイツには三つ年上の姉さんがいて、去年出産してるんだ」
「そうだったんですね」
そのお姉さんに聞いたってことか。