身ごもり政略結婚
「朝食作りますね」
「いや、いい。結衣、昨日は食べてないんじゃないか? なにか食べたいものは?」
お腹は空いているが、またあの吐き気がやってくると思うと食べるのが怖い。
でも、赤ちゃんのために食べないといけないんだろうな。
餡の匂いはダメだったけど、アイスは食べたいかも。
「アイスクリームが食べたいです」
「それなら買ってきてやる」
彼がすぐに出ていこうとするので腕を引いて止めた。
「あのっ、濃いタイプのものじゃなくて、百円くらいで買えるカップのが……」
小声で付け足すと、彼はキョトンとしている。
「そんなのでいいのか?」
「はい。バニラがいいです」
いつもならちょっとリッチなタイプが大好物。
でも今はそんな気分ではなく、しかもチョコやストロベリー、抹茶なんかよりバニラがいい。
「わかった。自分の朝食も買ってくるから、ゆっくりしてて」
「はい」