駆け抜けて、青春
Prologue はじまりは、偶然で必然
きっかけなんてものは、単なる偶然で。
中2だった私は年子の妹の梨由が出ている大会をたまたま観に行って、次のレースをぼんやりと眺めていた、それだけ。
“続いてのレースは、男子100m走です”
よく通るアナウンスの人の声に導かれるようにふとスタート位置を見ると、何人もの選手がスタートの準備をしていて。
けれど、その中で私の目を引いたのは1人だけだった。
“On your mark”
トラックに一礼して、選手がクラウチングスタートの体勢をとる。
その動作でさえ緩みがなくて綺麗で。
私は彼の一挙手一投足に完全に惹き込まれていた。
“set”
パン! とピストルの音が鳴り、とんでもなく加速していく。
知らなかった。陸上がこんなにも感動する競技だったなんて。
彼らが、彼がゴールするとき、私の目からは音もなく涙がこぼれた。
心臓がばくばくする。
こんなの、変だ。
でも、もっと知りたいと思った。
梨由が、なんて理由じゃなくて、私自身が知りたいと思った。
この競技を。あわよくば、あの人を。
私も、もっと……。
中2だった私は年子の妹の梨由が出ている大会をたまたま観に行って、次のレースをぼんやりと眺めていた、それだけ。
“続いてのレースは、男子100m走です”
よく通るアナウンスの人の声に導かれるようにふとスタート位置を見ると、何人もの選手がスタートの準備をしていて。
けれど、その中で私の目を引いたのは1人だけだった。
“On your mark”
トラックに一礼して、選手がクラウチングスタートの体勢をとる。
その動作でさえ緩みがなくて綺麗で。
私は彼の一挙手一投足に完全に惹き込まれていた。
“set”
パン! とピストルの音が鳴り、とんでもなく加速していく。
知らなかった。陸上がこんなにも感動する競技だったなんて。
彼らが、彼がゴールするとき、私の目からは音もなく涙がこぼれた。
心臓がばくばくする。
こんなの、変だ。
でも、もっと知りたいと思った。
梨由が、なんて理由じゃなくて、私自身が知りたいと思った。
この競技を。あわよくば、あの人を。
私も、もっと……。
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