駆け抜けて、青春
「おい、ゆーら。お前またトリップしてんの?」
「んな、トリップなんてしてない!湊こそ私たちはまた最下級生なんだから態度改めなよ!」
不意に後ろから現れてニヤニヤしながら声をかけてきたのは、紛れもなく腐れ縁の吉川 湊 (きっかわ みなと) だった。
奴も陸上をやっていて、中長距離のくせにとんでもなく速い。バカでどこか変だけど、やっぱりいい奴だ。
私たちは地元に近くて陸上が強いところを選んでここにきた。
つまり、そういうこと。
「また3年間よろしく、ゆら」
湊が手を差し出すから、私も同じように手を出した。
「仕方ないから支えてあげますよ、湊さん?」
調子乗るな、偉そうにすんなと空いている方の手で軽くチョップを食らってしまったけれど。