緑の風と小さな光 第2部
第1章 芽生えの国の王太子
あの日から3ヶ月が経った。
「あの日」というのは、セレが夜中に王宮に忍び込んだ日の事だ。
ロストークの国王ヤールはその夜の事を思い出していた。
半月に照らされてヤールの目の前に現れた兄、セレは生前のままの姿だった。
心臓を患い、22才の誕生日の直前に絶命した筈の兄。
『ヴァッシュ様の魔法で今夜だけの蘇生だ』
とセレは言っていたが、ヤールは腑に落ちない。
タリヤにやられた傷から滴っていた血は死人のものとは思えなかったし、止血のハンカチを巻いた時に触れたセレの腕は暖かかった。
それに服装。
埋葬の時には王太子の正装だったのに、あの夜のセレは平民の服を着ていた。
何度も思い返し、考えれば考える程「兄様は生きている」と思えて仕方ない。
とうとう『確かめてみよう』と思うに至った。
「タリヤ」
側近で、護衛でもあるタリヤを呼んだ。
「はい。」
「明日、兄様の墓に行く。一緒に来てくれ。」
「…はい。」
前回の墓参りからそんなに経っていないのに何だろう?とタリヤは思った。
「シエナかローエンに連絡しますか?」
ヤールが離宮に行く時は2人のうちのどちらかに部屋を整えておいてもらう。
「あの日」というのは、セレが夜中に王宮に忍び込んだ日の事だ。
ロストークの国王ヤールはその夜の事を思い出していた。
半月に照らされてヤールの目の前に現れた兄、セレは生前のままの姿だった。
心臓を患い、22才の誕生日の直前に絶命した筈の兄。
『ヴァッシュ様の魔法で今夜だけの蘇生だ』
とセレは言っていたが、ヤールは腑に落ちない。
タリヤにやられた傷から滴っていた血は死人のものとは思えなかったし、止血のハンカチを巻いた時に触れたセレの腕は暖かかった。
それに服装。
埋葬の時には王太子の正装だったのに、あの夜のセレは平民の服を着ていた。
何度も思い返し、考えれば考える程「兄様は生きている」と思えて仕方ない。
とうとう『確かめてみよう』と思うに至った。
「タリヤ」
側近で、護衛でもあるタリヤを呼んだ。
「はい。」
「明日、兄様の墓に行く。一緒に来てくれ。」
「…はい。」
前回の墓参りからそんなに経っていないのに何だろう?とタリヤは思った。
「シエナかローエンに連絡しますか?」
ヤールが離宮に行く時は2人のうちのどちらかに部屋を整えておいてもらう。
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