緑の風と小さな光 第2部
「何も知らずに兄様の優しさに包まれていればいい。

だが、私はそうはいかない。

それでは気が済まない。…兄様の心を知る者として、何かしたいのだ。兄様の為に。

いつだってそう思っていた。…だから、せめて私には全てを話してほしかった。」


「…そうでしたか…」

「で?兄様は今は何処にいる?」

「…わかりません…」

「わからないだと?無責任だな。」

明らかに責める口調だ。

ヤールはセレとは違い、気性がやや激しい所がある。

「…旅に出ております。」

言いづらそうにローエンは答えた。

「旅?一人で?」

ヤールの視線は鋭かった。

「実は…」

ローエンは、セレが自分の娘と旅をしている事を話した。

それを聞いたヤールは隣に控えているタリヤに呼びかけた。

「タリヤ。」

「はい。」

「兄様を捜せ。離宮に戻って頂く。準備が整い次第、出発しろ。」

「承知致しました。」

タリヤは恭しく頭を下げた。
< 10 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop