緑の風と小さな光 第2部
国境は大きな河だった。

橋を渡ってスザールに入った。国が変わった途端に道が広くなった。

「道や用水路は立派になった。…確かに一部の人間の暮らしは良くなったよ。」

「逆に貧しい者は更に貧しくなったって事だろう?危険な話しだ。」

そういう国は国民を管理したがる。

入国の為の検閲は他の国よりも厳しかった。特に持ち物は全て調べられた。

持っていたら怪しまれそうな金貨や装飾品などは魔法書に挟んで空間の狭間に隠した。

「特に変わった物は無いようだ。いいだろう。」

検閲官から入国の許可が降りた。

きれいに舗装された道を、エルグの案内で進んだ。疎らに民家と商店が見えて来た。

「もう少し行くと市場があるんだ。」

段々と人が多くなって、市場らしいざわめきが聞こえてきた。

しかし活気は今ひとつだった。

「小ぢんまりしちまったな…前はもっと賑やかだった。」

エルグが呟く様に言った。

「店の数もだが、スザールでは人の集まる所には必ず音楽や踊りがあった。それが今はほとんど無い。」

市場を見渡してもヒターラを掻き鳴らす男が一人いるだけだった。

「あの曲、知ってるわ。」
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