緑の風と小さな光 第2部
「お前を連れて来た意味があったのだな。」

と言い、セレに渡した。

セレは黙って受け取り、弦をはじいてみた。

前に使った安物とは音の響きが全然違う。

「…良い音だ。」

「当たり前だ。近隣の諸国にまで名の通った職人に作らせたのだ。」

「スザールの国民は音楽には造詣が深いんだな。」

セレはヒターラを軽く鳴らしながら音を調えた。ピアリの声のトーンは大体分かっている。

「何の曲にする?」

ピアリは自分の1番好きな曲を選んだ。ロストークの伝統的な曲だ。

セレの指が滑らかにヒターラを奏でた。

ピアリの歌が始まると、そこにいた人々の表情が変わった。

「…すごい…」

エイダでさえも、目に感動の色を見せた。

しかし、スヴィアは…相変わらず彫像の様だった。

歌が終わり、あちこちから拍手が起こった。

スヴィアも形だけの拍手をしたが、全く心が動いていないのは誰が見ても明らかだった。

「御苦労。確かに美しい声であった。」

味も素っ気もない言い方だった。

…これでも駄目だったか…

エイダは目線を下に向け、肩を落とした。

それを見てセレは言った。
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