緑の風と小さな光 第2部
「…欲しかった訳ではない…だが、手に入れたら最後…その力を使わずにはいられない…」

「…陛下…」

そう言って、エイダは、しまった、という顔をした。

「…『陛下』?」

「まさか…アスヴィル国王陛下…?」

「…そうだ」

スヴィアは答えた。

エルグは目を疑った。

アスヴィル国王はまだ20代のはずだ…しかし目の前にいるのは、どう見ても老人…

「政務官や将軍が奢り高ぶって、国王陛下を軽んじたからです。…王家のおかげで自分達の地位がある事を忘れてしまったのです。」

エイダが言った。

幼かった国王の名前を使い、商人とつるんで富を欲しいままに貪る者や、我が物顔で権力を振るう者がいたのだ。

「スザールの特産物が商人に買い叩かれていた事は判っていたのに、私はどうする事も出来なかった。

…政務の者が税を重くした事も、軍人達の暮らしが異常に贅沢だった事も判っていたのに…

何とかしたかった…でも私の言う事に耳を貸す者などいなかった。

多分、魔法商はそんな私の心を見透かして『竜のルビー』を持ってきたのだろう。」

スヴィアは淡々と続けた。

「美しい液体だった。本当にルビーを溶かしたような…」
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