緑の風と小さな光 第2部
「兄様の5才の誕生日の時だ。」
ロストークでは、5才の誕生日は「死亡率の高い幼児期を良くぞ無事に乗り越えた」という意味のある特別なお祝いだ。
身体が弱かったセレにとっては、より意味が深い日だった。
家族でささやかな晩餐会を開こう、ということになり、セレは王宮に招かれた。
その日は、父王も時間を割いてセレの顔を見に出て来た。
晩餐会の前の僅かな時間、セレは両親と共に中庭を散歩した。
王宮の前の広い庭園では人目についてしまうので、回廊に囲まれた中庭の一角を選んだのだ。
小さな噴水があり、その周りには、アベリアという白い小花とノウゼンカズラのオレンジ色が美しいコントラストを織り成していた。
セレは生まれて初めて両親に手を繋いでもらった。
右手は母、左手は父だった。
ただ嬉しくて、2人の顔を交互にずっと見ていたので、白とオレンジ色の花以外の風景は何も覚えていない。
両方の手から、魔法の波動なのか、父と母の心なのか、ただの体温とは思えない何か暖かいものが流れて来て、ふんわりと心を満たしてくれた。
多分、時間にしたら30分位の事だろうが、セレには夢の様なひとときだった。
ロストークでは、5才の誕生日は「死亡率の高い幼児期を良くぞ無事に乗り越えた」という意味のある特別なお祝いだ。
身体が弱かったセレにとっては、より意味が深い日だった。
家族でささやかな晩餐会を開こう、ということになり、セレは王宮に招かれた。
その日は、父王も時間を割いてセレの顔を見に出て来た。
晩餐会の前の僅かな時間、セレは両親と共に中庭を散歩した。
王宮の前の広い庭園では人目についてしまうので、回廊に囲まれた中庭の一角を選んだのだ。
小さな噴水があり、その周りには、アベリアという白い小花とノウゼンカズラのオレンジ色が美しいコントラストを織り成していた。
セレは生まれて初めて両親に手を繋いでもらった。
右手は母、左手は父だった。
ただ嬉しくて、2人の顔を交互にずっと見ていたので、白とオレンジ色の花以外の風景は何も覚えていない。
両方の手から、魔法の波動なのか、父と母の心なのか、ただの体温とは思えない何か暖かいものが流れて来て、ふんわりと心を満たしてくれた。
多分、時間にしたら30分位の事だろうが、セレには夢の様なひとときだった。