緑の風と小さな光 第2部
ローエンもやっと理解した。

『何を言っても大丈夫』だから『何を言ってもいい』訳ではない。


「兄様は何を言っても受け止めてくれるし、心を閉じる事も無い。人を蔑む事も無い。
私も離宮に行く度にわがままを言ったものだ。

だが、この話しを聞いた時には今まで兄様には何と申し訳ない事をして来たのだろう、と思った。

私も兄様に護られていたのに気付かなかったのだ…

あの竜巻事件だってそうだ。みんなは兄様のイタズラだと思っているが、そうじゃない。私の為なんだ。」


その内情を知るのは、セレの教育係であり、魔法医としてもずっとセレを見ていたヴァシュローク位だ。

『またセレ様が面倒を起こしたよ。身体が弱いくせにイタズラ者で生意気で、本当に困った子だね。』

セレはそんな陰口を知っていたが、決してヤールには言わなかった。

後に侍従の噂話からヤールの耳に入ったのだった。

「きっと護ってくれていたのだ…私の知らないところで…おそらく他にも…」

セレが魔法で地震を抑えた事もごく一部の人間しか知らない。

実際にはどれだけ多くの人が護られていたのだろう…

「他人はそれでいい。」

ヤールは言った。
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