星野くんとの朝時間
1 あいさつ
その境界線を越えるとき、今日も私はドキドキしている。

ただ一歩、廊下から教室に入るだけなのに、私、本條美羽(ほんじょうみう)の心臓は高鳴っていた。

(居るかな、居ないかな)

心の中でつぶやきながら教室へ入る。

何気ない態度をよそおって。

窓際、一番後ろの席に座っている星野くんが目に入る。

(居た!!)

黒ぶちのメガネをかけていて、クールな雰囲気が特徴だ。

2、3呼吸して、思い切って声をかける。

「おはよう」

星野くんが今気付いたように、本に落としていた視線を上げ、私の方を見た。

心臓の音がうるさい。

「あぁ、おはよう、本條さん」

それだけを言うと、再び本へと視線を戻す。

(言えた!今日もあいさつ出来た!)

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