星野くんとの朝時間
委員会の前に感じた興奮は霧散し、ただ現実だけがそこにはあった。

もっと話したい・・・・・・。

美術室で勇気を出して伝えたことを思い出す。

教室からは楽しそうな笑い声が聞こえる。

よく考えると、私は星野くんのことをほとんど何も知らないことに気付いた。




「入らないの?」


びっくりして顔をあげると、そこには八坂くんが居た。

ぐるぐるとした思考が断ち切られる。

八坂くんはいつものとおり、飄々とした様子で、何を考えているのか読めない。


「か、帰ろうかと」


思わずそう言うと、八坂くんは間髪を入れずに言った。


「星野、待ってるよ」

「でも、今取り込み中じゃあ・・・・・・」

自分でもびっくりするほど自信なさげな声が出た。

八坂くんは頭をかくと、つぶやいた。


「あーもう、じれったいなあ」


ガラリとドアを音を立ててあけ、「椎名!ちょっと来いよ!」とおそらく女子生徒であろう名前を呼んだ。

名残惜しそうな女子生徒は星野くんの傍を離れて、ドアの方へ向かって来る。

「ほら行け」


そう八坂くんに背中を押されて、女子生徒と入れ違いに教室に入る。

八坂君と、椎名さん(?)の声が少しずつ遠くなるのがわかった。

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