ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「あいつを……信じてやってください。無茶もする奴ですけど、考えなしに動くような男じゃない。きっと何か、理由があると思うんです。あいつが愛してるのは、あなただけですよ」
彼を、信じる。
もちろん、信じてる。信じてるけど……
その時の私は……何も言えなかった。
上の空でただ頭を下げ、そして踵を返した。
◇◇◇◇
その日の夜。
シャワーを浴びて、ホテルロゴの入ったパジャマに着替えた私は。
スプリングの効いたベッドの上にぺたんと座り込んで、目の前に置いた携帯とにらみ合っていた。
もう、意地なんて張ってる場合じゃない。
連絡すべきだ。
彼が何を考えてるのか、直接聞かないと。
話し合わないと。
わかっているのに、なかなか手は伸びない。
室内の沈黙に、時折重たいため息が混じるばかり。
今までネットでどんな情報が流れても、自分から連絡はしなかった。
信じてるから――そう言い聞かせてきたけど。
たぶん、そうじゃない。
ずっと直視することを避けてきた、この胸の奥を覗き込めば、
理由は明らかだった。