ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
『どちら様ですかぁ?』
シンシアじゃない、ってことはすぐわかった。
もっと幼い感じ……若い日本人だ。
後ろの方からは、ガヤガヤカチャカチャと、騒々しい音が聞こえてくる。
友達と食事でもしてるんだろうか。
『ライアンさんに何か用? つか、あんただれ――ぁん』
『こら、勝手に人の携帯、触っちゃダメだろ?』
ゴソゴソっと音がして。
取って代わったのは、ライアンの声。
『ごめんなさぁい、だってぇ、ずっと鳴ってるんだもん。ライアンさん、なかなか戻ってこないしぃ』
媚びるような声に、爽やかな笑い声がかぶる。
『心配してくれてありがとう。あっちにルイちゃんに似合いそうなピアスがあったよ。気に入るかどうか、見てごらん』
『気に入ったら、買ってくれるんですか?』
『いいよ』
『マジですかぁっ! ちょーうれしぃっ!! 見てきますねっ!!』
バタバタっと騒がしい足音が、背後の賑わいに紛れていく――
『ちょっと待って、飛鳥。今、パーティー中でさ。ジュエリーブランドの新作発表会なんだけど……周りがうるさくて』