ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
受話器の向こうが――静かになった。
場所を移動したらしい。
『ごめんね、何だった?』
な、何だった?
何それ、それだけ?
そっちからは、何も説明とか、釈明とか、弁解とか、言うことはないわけ?
それよりまず、“ルイちゃん”って誰よ?
マグマみたいにふつふつ湧いてくるいろんな感情を紛らわそうと、パジャマの裾をぎゅっと握り締めた。
落ち着け。
落ち着こう。
「……き、今日、拓巳さんに会ったの。会社に行ってないって、クビにしてくれって言ったそうだけど、どういうこと?」
『どうって言われても……そのままだよ。マスコミが会社まで来ちゃってさ、他のみんなが、仕事にならないから』
「会社辞めて、どうするつもりなの? シ……シンガポールに、行くの?」
『それは……まだわからない。状況次第かな』
「ねえライアン、あなた何考えて――」
『飛鳥、ごめん。そろそろ行かないと。あんまり長い時間抜けるとまずくて』
心が、シンと冷えていく。
これは、本当に私の知ってるライアン・リー?
『それから……申し訳ないけど、こっちからかけるまで、電話もしないでほしいんだ』
「……え?」