ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
今すぐ、母子手帳を鼻先に突きつけてやりたかったけど――……ダメだ。
さらに濃密にまとわりつくそれに、ぐぐっと胸の内で不穏なものが勢いを増す。
みっともなく乱れる呼吸が、頼りない足元が、恨めしい。
言い返してやりたいのに――……
「ぁ、っ……!」
ぐらりと体をふらつかせた私の腕から、カバンがズルっと滑り落ち。
バサッ!
衝撃で、中の書類やノート類が飛び出した。
内ポケットにしまっていた、マタニティマークも一緒に。
一瞬、彼女がその意味に気づくんじゃないかと、浅ましい期待をしたけど――
「日本人て、ほんとにキャラクターものが好きなのねえ」
鼻で笑われて、悔しさに目がくらむようだった。