ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
周囲が「ひっ」とビクつくほどの、強い怒りを孕んだ攻撃的な声。
けど、ライアンは……
「仕事で来たわけじゃありません。そんなに目くじら立てることないでしょ? あぁ日本語っておもしろいですね。どうしてクジラなんでしょうね? イルカじゃなくて」
飄々とした声は、確かにライアンのものだ。
でも、ほんとにこれが彼の本心なの?
私の知ってる彼とは、まるで別人……
「話にならんな」
唇を噛みしめる私に気づいたのか、部長がその腕に力を込める。
そして。
「……心底、お前という男を見損なったよ」
吐き捨てるように言い、私を抱えたまま歩き始めた。
「坂田、真杉の荷物をあとで医務室に届けてくれ」
「は、はいっ! 了解です」
「やだ、怖ぁい」
おどけたようなシンシアのセリフが聞こえても、私はずっと下を向いていた。
フロアを出るまで、ずっと。
ライアンがどんな顔で私を見るか……知るのが怖かったから。