ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

――あいつとは別れろ。シングルマザーは大変かもしれないが、俺が会社にかけあって環境を整えてやる。あんな男のことは、とっとと忘れてしまえ。


医務室の狭いベッドに横になって白い天井を見上げながら、さっき部長に言われた言葉を反芻する。

別れる。

口の中でつぶやいて、その暗い響きに身震いした。

でも、頭のどこかではなんとなく、わかってる。
これは、決定的だって。

シンシアの腰を抱いたライアン。
彼女へと注がれる眼差し。

実際に目にしてしまったんだもの。
言い訳も誤魔化しも、もうできない。


――ははっごめん、びっくりした?

前回医務室に来たときは……ライアンと一緒だった。
自分の手をドリンクで冷やして、人間冷えピタみたいに……

もう、あの優しさは、私のものじゃない。


私は……フラれたんだ。


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